
論語と算盤を読み解く
RIO
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えーと、今日はちょっと蒸し暑くて、収録前にコンビニでアイスコーヒーを買ったんですけど、なんかレジで「国産の豆を使っています」って書いてあるポップが目に入って、まあそれ読んだ瞬間にちょっと笑いそうになったというか、[笑] 今日やる回とあまりにもタイミングが合いすぎていて。で、今日取り上げるのは、渋沢栄一の『論語と算盤』、「実業と士道」という章の中の一節、「模倣時代に別れよ」です。渋沢がこれを書いたのは、明治維新からおよそ半世紀が経った頃で、日本が西洋の技術や制度を猛烈な速度で取り込んでいた時代です。その当時の日本社会には、「舶来崇拝」という言葉が実際に使われていて、つまり外国から来たものというだけで良いとみなす空気が、わりと普通にあった。渋沢はその空気に対して、この章で正面から切り込んでいます。今夜はこの章を読み解いていきます。
まず、渋沢が批判していたのは何か、というところから整理します。「舶来品は良い、国産品は劣る」という序列意識、これを渋沢は根拠がないと言っています。でね、ここで一回立ち止まってほしいんですけど、渋沢は「輸入するな」とは言っていない。「有無相通」という言葉を使っていて、互いに持っていないものを融通し合う、それ自体は経済の自然な原則だと認めているんです。ということは、渋沢が標的にしているのはモノそのものの話ではなくて、「外国から来たものだから」という理由だけで思考を止めてしまう、その判断の仕方に向いている。それ、本当ですか、と問い返せないまま飲み込んでいる状態、と言い換えてもいいかもしれない。
次に、渋沢が求めた「自発自得」という概念について。模倣を経て、次の段階として自分たちで考えて作って検証する、そのプロセスに入ることを言っています。で、ここで渋沢が評価しているのが当時の国産奨励会で、具体的に何をやっていたかというと、調査と研究、それから共進会、今でいう品評会みたいなものを開催することを活動の柱にしていた。これが重要なのは、精神論じゃないということで、制度と検証の仕組みがセットになっている。あなたが今の組織で「うちの文化を大事に」と言われたとして、でも何を根拠に大事なのかを誰も説明しないまま終わる、という経験をしたことがあれば、渋沢がここで求めているものとの落差がすぐわかると思うんですね。
えーと、もうひとつ、見落とされやすい論点を確認しておきたくて。渋沢はこの章で「国産品を買え」とだけ言っているんじゃなくて、粗製濫造品の横行を強く問題視しているんです。国産奨励という旗を立てながら品質を担保しない製品が出回ることを、むしろ国産品の信頼そのものを傷つける行為として批判している。ここが渋沢の主張の核心のひとつで、「国産か輸入かを選べ」という話ではない。これを現代に重ねると、たとえばクラウドファンディングで「職人の手仕事」「国産素材にこだわった」というコピーで集金して、実際に届いた製品が全然違うもの、というケースが何度も問題になっているあのパターンです。「国産奨励」の看板が、品質の根拠を問わずに共感だけを動員するためのラベルになっている、[pause] それが渋沢の言う粗製濫造の現代版だとぼくは思っています。
で、ここが今日の章で一番面白いと思っているところなんですけど、「模倣時代に別れよ」という章は、「国産を応援しよう」という文脈でよく引用されます。でもね、渋沢の論旨はむしろ逆の方向にも刃を向けていて、「国産だから良い」という根拠のない崇拝もまた、舶来崇拝と同じ構造だと読めるんです。判断の根拠を持たない、という点においては全く同じ。つまり、外から内へ方向が変わっただけで、思考の止め方は変わっていない。さらに、組織の話に引きつけると、あなたも経験があるかもしれないんですけど、海外発の経営フレームワークを、それが自社の実態に合っているかどうかを検証しないまま「有名なコンサルが薦めている」という理由で導入する、というのはわりとよくある話で、これがまさに現代版の模倣の時代です。手法の名前と出所を信頼しているのであって、内容を吟味していない。渋沢の言う「自発自得の域」というのは、外来のものを否定することじゃなくて、自分たちで検証して適合を判断できるようになること、そのプロセスそのものを指しているとぼくは読んでいます。
まあ、今日の章を通じてぼくが一番感じたのは、渋沢がこの章で問うていたのは「何を選ぶか」ではなくて「どんな根拠で選ぶか」だ、ということで、そこは今も全然変わっていないと思っています。国産か輸入か、古典か最新の手法か、どちらの旗を立てるかではなくて、自分がその判断をどこに根拠づけているかを一度点検してみてほしい。[pause] あなたが今使っている「良い」「正しい」の基準は、誰かが決めたものをそのまま使っていないか、それとも自分で検証したものか。次回も『論語と算盤』の別の章を読み解いていく予定です。番組「論語と算盤を読み解く」でした。
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