
ヨイの推しを語らせて
宵(よい)
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……どうも。真夜中です。えーと、今きょうが何日なのか正直ちょっと自信がないんですけど、まあそれはいつものことなので置いておいて。今夜はですね、その——もともと「いちまいだけ確認したいシーンがある」って気持ちで円盤を引っ張り出したんですよ。棚の奥から。ほこりを払って。で、「みるだけ」のつもりが、気づいたら第一話からずっと通してて、夜があけていたという。[pause] まあ、よくある話なんですけど。問題はですね、目が限界を超えたあたりで、手元のアクリルスタンドと目が合ってしまったんです。マスタングの。例のあの、ちょっとえらそうな顔してる奴。で、思わず言ってしまったんですよ、「あなたのせいです」って。声に出して。真夜中にひとりで。……そういう夜なので、今夜のテーマはもう、決まっていました。
改めて、今夜話したいのは——エドワード・エルリックとロイ・マスタング、この二人の「言葉にしない信頼」の話です。で、絞る場面はひとつ。イシュヴァールせんめつせんの記憶が明かされたあと、北方司令部でエドがマスタングに正面から問い質すあのくだり。「だいそうとうの椅子を狙う理由はなんだ」って。あそこです。マスタングがあの場面で語るとき、いつもの軽口がないんですよ。ひょうひょうとしたところが全部落ちて、静かに、ほとんど独り言みたいな声で、「わたしは頂点を取らなければならない」って理由をしゃべる。あそこのマスタングの「静けさ」が、わたしはすごく好きで——いや、「好き」というより、あの剥き出しの感じが、刺さるんですよね。で、エドの返答が、言葉じゃないんです。セリフじゃない。聞き終わって、[pause] きびすを返して、歩いていく。肯定も否定も、なにも言わない。ただ「聞いた」という、背中だけで。この二人、普段は口喧嘩がデフォルトじゃないですか。タメ口で怒鳴り合って、「大佐のくせに」「こどもが」ってやってる二人が、あの場面だけ、互いに声のトーンが落ちるんですよ。それがもう——あのですね、ちょっと待ってください。今気づいてしまったことがあって。言葉にしない側がエドで、言葉にさせない側がマスタングで、つまり、マスタングが剥き出しで語ったから、エドは黙って受け取ることができた、てことじゃないですか? あの沈黙、二人でひとつの沈黙を作ってるってことで、それってつまり——え、これ、この構造——ちょっとわたし今すごいことを言ってしまっていませんか、あの歩き方の解像度が、エドの背中の、あの——[pause] ……っ、けほん。失礼しました。……「信頼してます」とも「ついていきます」とも一度も言わない二人が、あそこでいちばん信頼をかたちにしている。……尊い。
えーと、推しリクエスト便りのコーナーなんですが、今夜はお便りが届いていないので、わたしがもういちまい場面を引き取らせてもらいます。これも鋼の錬金術師、中央でマスタングが追い詰められているあの場面です。エドたちが「賭ける」と判断して動く、あのくだり。ここで、まあわたしがずっと気になっているのが「じゅんじょ」の話で。マスタングって、エドが来たことを「確認してから」動いてないんですよ。「来るもの」として、すでに動いている。呼んでもいない、頼んでもいない相手が来ることを、根拠なく前提にして動いている。そこなんですよ、そこ。で、エドの側も「呼ばれたから行く」じゃなくて、「呼ばれてないけど行く」という構造で、「頼む」も「行く」も、どちらも声に出ていない、なのに二人の動きが噛み合っている。要請と応答のループが、そもそも成立していないのに連動しているんですよ。この二人の回路、なんなんですか。……まあ、えーと、ここからこの作品に入ってきたよっていうあなたにも、ここだけ切り取って見ても絶対に何かが来るので、ぜひ、あの場面だけ抜き出して見てみてほしいと思います。
今夜は、「言葉にしない」二人の話をしました。まあ結局、セリフのない場面ばかり話していたような気がしますけど。……次回への問いかけをひとつ置いて終わりにします。あなたが「無理だった」シーン——それはセリフでしたか、それとも沈黙でしたか。お便りは概要欄のアドレスまで。ジャンル・カプ不問、にわかも古参も歓迎です。……また真夜中に。
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