
ヨイの推しを語らせて
宵(よい)
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……はい、始まりました。「真夜中、推しを語らせて」。えーと、今夜のわたしなんですけど、まあ、ちょっと寝不足でして。昨夜ですね、書き下ろしの設定資料集を、ちょっとだけ開くつもりだったんですよ。ほんとうに、ちょっとだけ。でね、気がついたら朝で、しかも付箋がふえてた。自分で増やしたんですけど、全く記憶がなくて。読み返すつもりなんてなかったのに、なぜかペンも握ってたんですよね。こういう夜に限って、収録があるんですよ。まあ、自業自得なんですが。……さて、始めましょうか。
今夜語るのは、『鋼の錬金術師』、エドワード・エルリックとロイ・マスタングの関係性です。ただ、その前にひとこと。アニメ・原作ともに、核心部のネタバレをふくむ可能性がありますので、まだ本編をご覧になっていないあなたは、ぜひいちど作品に触れてから聴き直してほしいんですよね。待ってますので。 [pause] で、あらためて。表面だけ見ると、まあ、言い合いばっかりしてる、やっかいな上司と部下、なんですよ。マスタングはエドをこき使うし、エドはすぐ口答えする。でもね、わたしがずっと気になってるのは、この二人って、互いの実力を誰よりも正確に把握してるんですよ。口では認めない。でも行動では、絶対に裏切らない。これがもうたまらなくて、この非対称な信頼構造っていうのが、わたしにはずっとぐっとくるところで。 たとえばマスタングがエドに向ける感情って、「使える駒」以上のものが、言葉じゃなくて判断の速さに出るんですよね。あ、この人いま守ろうとしてる、って分かる瞬間が、台詞じゃないところにある。で、エドのほうはどうかっていうと、第三者に「あの人は信用できる」ってちゃんと言うんですよ。本人には絶対言わないのに。これがもう、わたし的には最高の愛情表現で、「背中を預ける」という行為がこの二人にとって、どれだけ重いことかっていう。不器用な信頼が積み重なって、最終局面でそれが一気に——あ、これがですね、構造として爆発する瞬間があって、そこの積み上げかたが——これが尊いっていうんですよ、これなんですよ、この、ちいさな判断のひとつひとつが全部繋がって—— ……尊い。 [pause] (コホン)……失礼しました。えー、まあ、そういう関係性です。
さて、推しリクエスト便りのコーナーなんですが、今夜はお手紙が届いていないので、わたしが勝手に語ります。これはもはやリクエストではなく、自分への言い訳です。[笑] えーと、わたしがいちばん好きなのは、この二人の関係性が「完成する瞬間」の話で。エドが軍を辞すっていう、距離が生まれる場面がありますよね。それでも互いの選択を尊重するっていう構造が、わたしはすごく好きで。マスタングの「野望」とエドの「目的」って、全然違うんですよ。なのになぜか同じ方向を向いてる、この並走感がずっと不思議で、「仲間」とも「友人」とも言い切れない、ジャンル不明の関係性なんですよね。そこにこそ、解釈の余白があると思っていて。 にわかでも古参でも、好きな読み方でいい、っていうのがわたしのスタンスなので、あなたがどう読んでも全部正解だと思ってるんですよ。「口喧嘩しながら世界を救う二人」って言えば全部伝わる、っていうか、それで全部伝わるのがこの二人で。で、その余白の話をしてるとですね、どうしても最推し解釈が漏れ出してきて、最終話のあの顔、あの距離感、あれは—— [pause] (コホン)……失礼しました。語りすぎました。続きはぜひ、ご自身の目で確かめてください。
今夜の一行は、これです。「素直に言わないことが、この二人の愛情の形でした」。あなたが「無理だった」シーン、ありますか。台詞でも、表情でも、間でも、ぜひ教えてください。「真夜中、推しを語らせて」、次回もこの時間にお会いしましょう。おやすみなさい。
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