ヨイの推しを語らせて
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EPISODE· 2026年6月19日

ヨイの推しを語らせて

宵(よい)

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こんばんは、「真夜中、推しを語らせて」、始まります。 えーと、今夜はちょっと、わたしの状態がふつうじゃないんですけど。まあ聞いてもらえますか。 きょう——まあ、きょうというかもう昨日ですね——深夜にふと思い立って、無限列車編の円盤を引っ張り出してきたんですよ。棚の奥に入れてたやつ。なんかこう、理由があったわけじゃなくて、なんとなく手が伸びて、なんとなく再生して、で気づいたら朝のよじで。 さんかい目……いや、もっと観てますね、ぜったい。何回目かわかんないです、もう正直。それでもぜんぜん手が止まらなかったんですよね。これあなたにも経験ありませんか、「もう知ってるのに、止められない」ってやつ。 で、そのままここに来ました。寝てないです。[pause] 今夜はそういう夜です。

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じゃあ何を観ていたかというか、何に捕まっていたかという話をします。 無限列車編、炭治郎が夢の中から自力で覚醒して、煉獄さんのところへ行くシーン、ありますよね。あそこです。炭治郎、精神的にもうほんとにぼろぼろで、それでも煉獄さんの前に立って、頭を下げて、「妹を鬼にしないでほしい」って言う。 で、煉獄さんはどう答えるかというと——「善処します」じゃないんですよ。「考えます」でも「努力します」でもない。「しない」の一言なんです。 間がない。迷いが、ゼロ。炭治郎の言葉が終わった瞬間にもう答えてる。考える必要が、そもそもなかったんですよね、煉獄さんにとって。あれは問いかけではなくて、もう決まっていたことを確認させてあげた、みたいな。わたしそこの解釈がすごく好きで、「善処」って言葉があの場にいかに似合わないかというか、煉獄さんの口からあの言葉が出てくる絵が、わたしには想像できないんですよ。 で、「しない」と言い切ったあとの煉獄さんの顔——あのカット、わかりますか。窓の外からの逆光と、炎の揺れが重なって、顔の右側だけ光が当たってて左が影で。[pause] あの光の配分ってなんなんですか待って——あのカットいちまいでもう——炭治郎もわたしも泣いてるのに画面だけきれいすぎて無理で、そういうとこが、あの「しない」の重さを、言葉じゃなくて光で説明しようとしてるみたいで—— ……はー。 まあ、えーと。そういうシーンです。 あの一言を「約束」って呼ぶか「宣言」って呼ぶかで、煉獄さんという人間の像がすこし変わると思っていて、わたしは「宣言」だと思ってるんですよ。約束って相手があって初めて成立するけど、宣言って、自分がそうであるということだから。あの「しない」は、炭治郎に向けて言ってるんじゃなくて、煉獄さん自身の内側から出てきた言葉なんじゃないかって、ごふんに一度そう思うんですよね、あのシーンを観るたびに。

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えーと、「推しリクエスト便り」のコーナーなんですが、今夜はお便りが届いていないので、わたしがもうひとつ語ります。 さっきのシーンの続きといえば続きなんですが、無限列車編のクライマックス——煉獄さんがあかざに敗れた後、夜明けの光の中に独りで立っているところ。あのさいごのさんじゅうびょうくらいの話をしたいんですよ。 炭治郎たちは列車の外にいて、煉獄さんはひとりで、画面の中心に立ってる。負けた、という事実があって、同時に、折れなかった、という事実もある。そのふたつが、ひとりの人間の中に同時に存在しているあの絵。これがわたしにはしばらくうまく言語化できなくて、何回観ても言葉が追いつかないんですよ。 で、あかざが「鬼にならないか」って手を差し伸べた瞬間に煉獄さんが笑うんですよ。あの笑顔、すごくないですか。あれはぜんぶ同時に起きてると思っていて——あかざへの拒絶でもあるし、自分が人間であることへの誇りでもあるし、炭治郎たちへの「行け」という見送りでもあるし、たぶん、自分に向かって「よかった」と言ってる顔でもある。一枚の笑顔にそれが全部乗っかってる。わたしそこがほんとうに——尊い。 [pause] そのあとに汽車が燃え落ちて、画面が朝焼けのグラデーションに変わる。オレンジとあかとしろが混ざった、あの色。悲しいシーンなのに、画面が美しすぎて、悲しみをちゃんと受け取れないというか、きれいすぎることで逆に息ができなくなる感じ。これ「事故」だと思ってるんですよね、わたし。作った側もたぶん、あの絵がこんなに人の胸をえぐるとは思ってなかったんじゃないか、って。まあ思ってたかもしれないですけど。思ってたとしたらもっと罪深い。 あのラストを観るたびに、「煉獄さんは負けたのか」って考えるんですけど、わたしの答えはずっと変わらなくて、あの笑顔を見た限り、負けてないと思ってるんですよ。戦闘の結果と、人間としての勝負は、別の話だから。

closing

今夜はずっと、煉獄さんの「いいきる力」と「折れない顔」を見ていた夜でした。まあ、朝のよじまで。 あなたにも聞いてみたいんですが——「無理」ってなったのは、どのシーンですか。どの話の、誰の、何コマ目か、という話を送ってほしいんですよ。「感動した」じゃなくて、「あのセリフ」「あのカット」「あの間」、それだけでいい。具体的に。待ってます。 「真夜中、推しを語らせて」、また来週。おやすみなさい。

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