
ヨイの推しを語らせて
宵(よい)
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こんばんは、やまのすすめラジオ、じゃなかった、「YOIのおしをかたらせて」、きょうもはじめていきます。 えーと、いきなりなんですけど、今週ね、グッズが届いたんですよ。アクリルスタンド。もうそれだけでいい一週間だったんですけど、問題は届いてからで。飾る場所がないんです、部屋に。すでにもうあちこちグッズが置いてある状態なのに、どこに置こうかさんじゅっぷんくらい真剣に悩んで、結局、作業机の前に落ち着いたんですね。そしたらきょう、仕事中ずっと目が合うんですよ。こっちが何かするたびに、じっとこちらを見ている。集中できるわけがない。グッズメーカーさん、これ絶対わかってやってますよね。「買ったら仕事できなくなる場所に置くでしょ」って。わかってて作ってる。で、うまいなあと恨みながら、追加で缶バッジも買い足している自分がいるっていう、まあ、どうしようもない話なんですが。これがわたしの今週です。
さて、今夜のお題なんですけど、埼玉の行田市から、ハルキくん、にじゅうよんさい。自転車で移動しながらコーヒーを売る、えーと移動販売をやっているそうで、売り上げに悩んでいるということなんですね。 「売り上げアップ」ってワード、聞いた瞬間、わたし、まず経営の話が頭に浮かんだかというと、全然そうじゃなくて、あるアニメのある場面が出てきたんですよ。われながら重症だとは思うんですけど、でも、これが今夜いちばん正直な話なので、付き合ってもらえると嬉しいです。 持ってきたのは、「ヤマノススメ」です。山に登るアニメ、って説明するとそれだけなんですけど、わたしがこの作品を好きな理由は、山頂の景色じゃなくて、山に向かおうとする人の顔が変わっていく、そのたびかさなりを丁寧に描いていることで。主人公のあおいはインドア派で、高所恐怖症で、それでも少しずつ、少しずつ山に向かっていく。で、ハルキくんの状況って、その文脈でいうとすごく面白い位置にいると思うんですよ。 だって、もう動いてるじゃないですか。自転車で街に出て、コーヒーを淹れて、人に渡している。問題は「売る量が足りない」じゃなくて、「誰に見つけてもらえるか」の話だと思うんです。これ、登山でいうと「ルート選び」の問題なんですよね。頂上は見えている、でも今どの道を歩くか、そっちの話。 [pause] で、ヤマノススメ、サードシーズンのだいいちわなんですけど、あおいが久しぶりに登山靴を押し入れから出してくるシーンがあって。ひなたに「また一緒に行こう」って言う、そのひとことの前の、靴を両手で持っているカットがあるんですよ。あおいはそのとき、山頂まで行けるかどうか、まだ考えていないんです。ただ靴を出した、それだけ。 そのカットの靴を持つ手の角度と、あおいの目線が少しだけ下を向いているあの間に、あおいが山から離れていたいちねんぶんの逡巡が全部詰まっていて、台詞じゃなくてあの手の角度で語っているんですよ演出として、待って無理それ、そういうとこ、しんどい、あのさんびょうくらいのカットで一年間語るって何、どういう解像度で作ってんのその画面、ほんとうに……。 ……はー。 えーと、そう。靴を出した、それだけ、っていう話で。ハルキくんに「靴を出す」に相当する小さなひとてを、みっつ考えてみたんですよ。 ひとつめ、走るルートを固定して、「毎週この曜日にここにいる」を近所の人に覚えてもらうこと。毎日バラバラに動くより、「あの人、水曜日にあのへんにいる」って記憶に刷り込まれるほうが、常連のたねになる。ふたつめ、SNSに売り上げじゃなくて、「きょう会った人」をいちぎょうだけ書く。お客さんの反応でも、道で挨拶した人でも、なんでもいい。見つけてもらうためのあしあとを残すイメージです。みっつめ、コーヒーを渡すときに、ひとことだけ書いたメモを一緒に渡す。きょうの豆の話でも、天気でも、ひとことで十分で、そのメモがあると「また来たい」の理由が一個増えるんですよ。 このみっつに共通しているのは、数を増やすんじゃなくて「記憶に残る」ための動作だということで、ヤマノススメ的に言えば、山頂を焦って見ずに、いちごうめの景色をていねいに歩く、ってことだと思うんです。そこなんですよ、そこ。ハルキくんはもう、靴を出して、山に来てる。あとはルートをひとつ決めるだけ、っていう話なんじゃないかなあと、わたしは思います。
ということで、きょうのリスナーへの問いかけです。あなたが最後にリピートしたお店、さんかいでも、にかいでも、なんでもいいんですけど、なぜ二度目に行こうと思ったか、覚えていますか。コーヒーでも、飯屋でも、美容室でも、なんでもOKです。そのきっかけ、ハルキくんのヒントになるかもしれないので、ぜひ送ってみてください。「YOIのおしをかたらせて」、またらいしゅうお会いしましょう。
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