深夜のひとりごと、聞いてもらえますか
深夜のひとりごと、聞いてもらえますか
EPISODE· 2026年6月20日

深夜のひとりごと、聞いてもらえますか

灯(あかり)

深夜のひとりごと、聞いてもらえますか

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opening

こんばんは。えーと、今夜もこの時間になりましたね。 そとはけっこう冷えてますよ。さっきコンビニまで歩いたんですけど、上着を一枚羽織って出たのに、それでも首のあたりがすこし寒くて、あ、もう季節が変わってきてるんだな、って、信号待ちのあいだに思いました。 で、コンビニに入って、あったかい飲みものを買おうと思ったんですよ。でもレジの前のあのコーナー、ほら、あそこってなんであんなに種類があるんですかね。カフェラテ、ほうじ茶ラテ、コーンスープ、コンソメ風の何か、あと甘酒まであって。えーと、ごふんくらい迷って……結局、いつものブラックコーヒーを買いました。[笑] なんのために迷ったんだろう、って思いながら。 まあ、そういう夜ってありますよね。選べそうで、選ばない夜。 そういう夜に、ラジオを開いてくれたあなたへ。今夜もここにいます。しばらく、一緒にいてください。

news

今夜、ひとつだけ、ニュースを話させてください。読み上げ、みたいにはしたくないので、わたしなりの言い方で。 きょう、東京の北区にある小学校で、火災がありました。校舎に煙がひろがるなかで、その学校の先生が、子どもたちをひとりずつ、抱えてひさしの上に逃がした、という話です。全員、無事でした。 [pause] こういうニュース、「ヒーローが現れた」みたいな感じで盛り上げることって、できるんですよ。でも、わたしは今夜、そういう夜にしたくなくて。 「抱えた」、っていう動作が、なんか、胸にずっとひっかかってるんですよね。煙が充満した廊下で、子どもをひとり抱えて、ひさしに出して、また戻って、次の子を抱えて——その先生が何を考えながらそうしたか、は、たぶん本人にも、きれいな言葉では言えないと思うんです。怖かったはずだし、でも怖い、って考える間もなかったかもしれないし。 頭で「こうすべき」と判断するより先に、体がもう動いてた、みたいな瞬間って、どんな重さなんだろう、ってことを、静かに想像したくて。「すごいですね」で片付けると、なんか、その重さがどこかに消えてしまう気がして。 ……まあ、そういう日もありますよね。上手く言えないまま、ただ胸に置いておきたい夜、というか。

mail

お便りのコーナーなんですけど、えーと、今夜は来てないんですよね。 でも、それでいいと思ってます。深夜に言葉を打つって、けっこうエネルギーがいることで、送信ボタンを押すまでに何回か消して、結局閉じた、みたいなこと、あなたにもないですか。わたしはあります。だから、送らずにただ聴いてる人のことを、ちゃんと想像しながら、この時間を続けてます。 で、お便りがない夜は、わたしがかってにひとりごとを言う夜、と決めてるので。今夜もそうします。 [pause] さっきのニュースの話——「頭より先に体が動いた」っていう経験、わたしにあったかなあ、ってずっと考えてたんですよ。思い出せなくて。むしろわたし、いつもワンテンポ遅れて動くタイプなんですよね。なんかことが起きると、まず「え、これ何が起きてる?」ってなって、把握してから動こうとして、その時にはもう状況が変わってる、みたいな。[笑] 緊急時に向いてないな、と思いました、自分で言っておいてなんですけど。 だから、あの先生がとっさに動けたことを、わたしはすごい、と思う以上に、わからない、と思ってるんだと思います。わたしには、そういうふうに動けるかどうか、分からないから。 言葉にしなくていい夜もある。無理しなくていいですよ、ほんとに。送らなかったあなたのことも、ここに来てくれたこととして、受け取ってます。

closing

今夜は、とっさに動けた人のことを想像した夜でした。それだけです。何かが解決したわけじゃないし、わたしに何かできたわけでもないけれど、誰かのことをしばらく考えた夜があった、っていうのは、たぶん、残ります。 次回への問いかけを置いて、終わりにします。 あなたには、頭より先に体が動いた瞬間、ありますか。あるいは逆に——「動けなかったな」って、今もどこかに残ってること。どちらでもいいです。どちらでもなくてもいい。次回、またこの時間に。おやすみなさい。

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