
深夜のひとりごと、聞いてもらえますか
灯(あかり)
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こんばんは。えーと、今夜もこの時間に来てくれて、ありがとうございます。 きょう、コンビニに寄ったんですよ。で、レジに持っていったら「あたためますか」って聞かれて、えっと、なんか一瞬、自分が何を買ったのか、わからなくなったんですよね。手に持ってるのに。肉まんだったんですけど、「あ、そうか、肉まんか」って確認するのに、ちょっと間があいてしまって。 なんか、夜が深いと、ちょっとしたことで自分の記憶に自信がなくなりませんか。さっきまで知ってたことが、急にぼんやりする感じ。それ、きょうに限らず、なんか最近多い気がして。 そういう、ちょっと自信がなくなる夜に、あなたも来てくれたのかな、と。そんな気がしているだけなんですけどね。
じゃあ、今夜の小さなニュースを、ひとつだけ。 滋賀の日野町じけんという、さんじゅうねんいじょう前の事件の話なんですけど。殺人事件で逮捕・起訴されて、有罪になった元被告の方が、再審、つまりやり直しの裁判で、無罪が確定する見通しになった、というニュースです。 ただ、その方はもうすでに、服役中に亡くなっています。 つまり、「あなたがやった」と言われ続けて、「やっていない」と言い続けて、それが最後まで、生きているあいだには認められなかった、ということで。で、その方がいなくなったあとに、「正しかった」と証明される夜が来た、ということなんですよね。 [pause] わたし、これ、喜んでいいのか、よくわからないんですよ。よかった、とも言えなくて、遅すぎた、とも、どちらかに決めたくなくて。なんか、さんじゅうねんいじょう、ずっと嘘つき扱いされ続けるということの重さが、わたしには、たぶんちゃんと想像しきれていないんですよね。その「重さの単位」みたいなものが、自分のなかにない。 …まあ、そういう日もありますよね。正しいとか正しくないとか、そういうこと以前の話が、世の中にはあって。今夜はそれを、ただここに置いておきます。
お便りコーナーなんですけど、今夜は届いていません。 まあ、謝りはしないですけど、なんか、わかる気がするんですよ。こういう話って、言葉にしにくいじゃないですか。うまく気持ちをまとめて送ろう、と思ったら、たぶん朝になってしまう。 [pause] でね、実は似たような感覚、わたし自身にもあって。昔、職場でもない、本当に日常の、ごく小さなことなんですけど、明らかにわたしが正しかったのに、ずっと訂正されなかったことがあったんですよ。事実の話ですよ、「この店、きょう定休日だよ」みたいな、本当にちっちゃなことで。で、ずいぶんあとになって、「やっぱりそうだったね」って言われたんですよ。そしたら、全然すっきりしなかったんですよね。怒る気力も、喜ぶ気力も、もうそこにはもうなくて、「あ、そう」ってなってしまって。 なんか、「すっきりする」って、タイミングが命というか、賞味期限があるんじゃないかな、とそのとき思ったんですよ。熱いうちに食べないと意味がない、みたいな。 でも、それ、どうしようもないじゃないですか。タイミングは選べないわけで。だからって、すっきりできなかったことを後悔するのも、なんか違う気がして。 まあ、お便りが来ない夜に自分語りをしている番組が、これでいいのかという疑問は、こっそり持ちつつ [笑]、今夜は解決しないまま、ここに置いておきます。それでいいと、わたしは思っているので。
最後に、ひとつだけ。 「正しかった」と証明されなくても、あなたがそのとき感じていたことは、本物だったと思いますよ。それだけ、ここに置いていきます。励ますつもりはないんですけど、ただ、同じ夜にいる人間として。 無理しなくていいですよ、ほんとに。 つぎの放送に向けて、ひとつだけ聞いていいですか。誰かに信じてもらえなかったこと、ありますか。大きなことじゃなくていいです、本当に小さなことで。もし、そういう夜が来たら、ここに送ってみてください。急かしたりはしないので。 お相手はわたしでした。おやすみなさい。
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