
論語と算盤を読み解く
RIO
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えーと、今日ね、スタジオに来る前にコンビニで缶コーヒーを買ったんですよ。で、レジで並んでいるとき、前の人が財布を出すのにものすごく時間がかかっていて、まあ、よくある話なんですけど、でね、そのとき店員さんがすでに袋を開けて待ってたんです。準備してた。それ見て、ああ、これだな、と思って。何がって話は、まあ、後でわかります。今夜は『論語と算盤』の『立志と学問』という章に入っていきます。この章でいう「勉強」という言葉、今ぼくたちが日常で使う「勉強」とは、たぶんずれがある。そのずれを、渋沢が秀吉という人物を通じてどう語っているか、そこを今夜は追いかけていきます。
まず、渋沢が原文で「勉強」の例として出してくるのが、秀吉の草履のエピソードです。信長の草履を懐で温めておいた、というやつ。あなたも一度は聞いたことがあると思うんですけど、このエピソード、たいていは「下積みの誠実さ」とか「忠義のエピソード」として語られますよね。でも渋沢が読んでいるのはそこじゃない。渋沢が見ているのは、「主君が外から戻ってきたとき、次に何を必要とするかを事前に想定して、すでに手を打っておく」という行為の構造なんです。寒い日に草履が冷たいと主君が不快になる、だから温めておく——これは忠誠じゃなくて、観察と予測を日常的に回し続けていた、ということだと渋沢は言っている。[pause] で、もう一つ渋沢が挙げるのが、本能寺の変のあとの中国大返しです。光秀が信長を討った知らせを備中で受けて、秀吉は素早く毛利と和睦し、ほぼ二週間で京に戻って山崎の戦いで光秀を討つ。渋沢はこの行動を「機略」という言葉で評価しています。状況を読んで、即断即決で動ける力、という意味です。つまりここまでの渋沢の「勉強」の定義は、知識を頭に詰め込むことではなく、目の前の状況を細かく観察し続けて、次に何が起きるかを自分なりに読んで、すでに備えておく習慣のことを指している。データで見ると、逆なんですよね——というか、ぼくたちが「勉強」という言葉で思い浮かべるものとは、だいぶ方向が違う。次に、渋沢が秀吉の短所として挙げていることを正確に押さえておきたくて、これが実は今夜の核心になります。渋沢は「家道が整わなかった」と言っています。秀頼をめぐる晩年の混乱、後継ぎの問題が解決できなかった、ということです。そしてもう一つ、「機略があっても経略がなかった」という対比を出してくる。機略は、その場その場の判断力。経略は、長期的な構造を設計する力。この二つは、鍛え方が違う回路だと、ぼくは読んでいます。渋沢の評価は結局こういう構造になっている——秀吉は、観察と先読みの習慣、つまり「勉強」によって天下を取ったが、構造を設計する力の欠如によって、それを維持できなかった、と。[pause] で、これを現代に引き寄せると、あなたも職場や業界で似たパターンを見たことがあるんじゃないですか。現場に長くいるのに、なぜかあまり成果が出ない人と、比較的短い期間で頭角を現す人がいたりする。この差を、単純に才能とか努力量で説明するのは、ぼくにはちょっと粗い気がしていて、前者は経験を積んでいるんだけど、後者は経験から「次に何が起きるか」を読む精度を上げ続けている、という違いがある、と見ています。機略と経略の話も、今の組織に当てはめられて、ある局面を突破する力は確かにあるが、組織の仕組みとして持続させる設計ができない、というパターンは今でも珍しくない。これは個人の性格の問題というより、その場の最適解を出す回路と、構造を設計する回路は、それぞれ別の鍛え方が要る、ということだとぼくは思っています。もう一つだけ言っておくと、このエピソードが現代でどう使われているかという話があって、「努力は才能を超える」とか「下積みの忠実さが成功を生む」という文脈で語られることが多い。でも渋沢が強調しているのはそこじゃなくて、愚直にやること自体が大事なのではなく、愚直にやりながら同時に観察と先読みが走っていた、という点なんです。どちらかに振り切る話じゃない、というのが渋沢の読み方だとぼくは受け取っています。
今夜の話を整理すると、渋沢が秀吉に見た「勉強」は、頑張ることでも忠義を尽くすことでもなくて、観察と先読みを日常の習慣として回し続けること、そういう意味合いだったと、ぼくは読んでいます。で、あなた自身はどうでしょう。今この時点で、観察と先読みを日常に組み込めていますか。経験を積むこと自体が目的になっていないか、一度立ち止まって点検する価値は、たぶんあると思います。もう一つだけ聞かせてください。機略と経略、その場の判断力と、構造を設計する力——あなたは自分にどちらが欠けているか、冷静に点検したことが、ありますか。次回も同じく『立志と学問』の章から、別の角度を取り上げます。今夜はここまで。「論語と算盤を読み解く」でした。
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