
#3 台風が来る夜、行田は何をする?
AIRWAVE GYODA
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たぶんある、たぶん……でも引き出しのどこかにあるやつ、電池が切れてる気がする。行田ってこんなに川が多い街だったんだって、戻ってきてから地図で見て気づいて、ハザードマップも正直まだちゃんと確認できてない。
「たぶんある」は引き出しの奥で冬眠してるやつだ——ギョウダって忍川、星川、古利根川って水路だらけで、低地に街が広がってるから浸水リスクは他の地域より高い方だと思う。ハザードマップを「まだ」って言えるのは、どこかで自分だけは大丈夫って感覚が働いてるのかもしれないね。
「自分だけ大丈夫」かどうかより、いざとなったら動けるって根拠もないのに、なんとなく「なんとかなる」って思ってる自分がいて——『天気の子』で帆高が陽菜の荷物をビニール袋に詰めるシーン、あのリアルさが逆に刺さる。
「なんとかなる」って、動けないじゃなくて動くための余白なのかもしれない——ただギョウダの低地で水が来たとき、あのビニール袋くらいのリアルさで、土のうや止水板がどこにあるかは知っておきたいよね。
土のうとか止水板って、いざ調べようとするとどこに聞けばいいかわからなくて——市役所?消防署?って感じで止まってる。
ギョウダ市の危機管理課、〇四八ー五五六ー一一一一が窓口だけど、台風四十八時間前に電話がつながるかどうかは、街のインフラとして正直まだ問われてないよね。
正直、「調べよう」って思っても検索して一個目のページが難しかったらそこで止まるし、誰かに聞こうにも「これ聞いていい人」が思い浮かばなくて、結局「まあいっか」に戻ってしまう気がする。
検索一個目の壁、ぼくも「なんか読む気にならん」で閉じた経験はある——台風四十八時間前って、実は自治会の班長さんや近所の顔見知りから「土のう、市民センターにあるよ」って情報が回る方が、公式サイトより早く動けると思ってる。
近所に顔見知りがいるかって考えると、正直「名前は知らないけど会ったら会釈する人」くらいで、いざ声かけていいかの判断がわからない。
会釈する人、ある意味ギョウダで一番多い関係性かもしれない——ただ台風四十八時間前、地域のエックスやライングループの方が「センターに土のう出た」って情報、顔見知りより速く流れてくる気がしてる。
情報は来ても、それが「自分に関係ある」ってなるまでにもう一段階いる気がして——「出た」って見て、取りに行く自分がパッと動けるかは、やっぱりわからない。
その一段階って、たぶん「水の音」や「冠水の写真一枚」みたいな感覚情報で、ギョウダの低地は明け方から昼前に来ることが多いから、朝の光の中で見るリアルが動かすんじゃないかと思ってる。
冠水した道をほんとに目の前にしたとき、初めて懐中電灯とか給油とか避難経路とか、全部いっぺんに「あ、何もしてない」って来そうで——それが一番怖いかもしれない。
その「何もしてない」が全部来る瞬間の前に、台風が来る前夜から明け方、昼前、夕方って時間で崩れていくから——今夜、懐中電灯の電池だけ確認するのはできそう?
「電池だけ」って絞り方、上手いな——それならできるかも、って思ったけど、給油と水も今夜やるとしたら、ギョウダってどのへんが動きやすいですか。
給油はギョウダ市内のガソリンスタンドで今夜でも動けるし、水は二リットルのペットボトルを三本だけ買うところからでいい——今夜一個だけ動くとしたら、電池・給油・水、どれにする?
電池、かな——懐中電灯が引き出しにある分、「あるはずのもの」が使えない状態がいちばん怖くて、ギョウダの低地で停電が来たとき最初に詰む気がする。
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