
ヨイの推しを語らせて
宵(よい)
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こんばんは、ヨイです。えーと、まずちょっと自己申告しておくんですけど、きのう、配信で一気見してたら夜が明けてました。[pause] いや、わかってるんですよ、やるときはやるって。でもあれですね、気づいたら窓の外が明るくなっていて、「あ、鳥が鳴いてる」ってなる瞬間、あなたも経験したことないですか。オタクの時間感覚ってほんとにバグるので、もはや慣れてはいるんですけど。で、そのついでにというか、ちょっと古い作品を見返す機会があって、初見のときに「ここがいちばん泣いた」と思っていた場面で、今回ぜんぜん違う感情になったんですよ。なんか拍子抜けするような、でも別のところでじわじわくるような。そのズレがなんなのかっていう話を、今夜はしたいなと思っています。
えーと、まずすこし入り口の話をすると、記憶ってよく「保存」に例えられるじゃないですか。でもわたしはそれ、ちょっと違うと思っていて。どちらかというと「そのつどの再編集」に近いと思うんですよね。たとえば好きな作品を人に話すとき、「神作品でした」って言うじゃないですか。でもそのとき頭の中に浮かべてるのって、じぶんが都合よく印象に残ってる場面だけで、冗長だなと思った回とか、よくわからなかった設定とか、そういうのってわりとスポッと抜け落ちてる。で、その結果として頭の中のキャラクターが、いつの間にかいまのわたしが好きな姿に寄せられてたりする。これ、美化とも少し違うんですよね。美化って意図的な感じがするんですけど、そうじゃなくて、勝手に、気づかないうちに編集されてる。 それで今夜取り上げたいのが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの、だいじゅうわ「愛してるって、なに?」の話なんですよ。あのエピソード、ご存知の方も多いと思うんですけど。末期がんのユリスっていう女性が、ヴァイオレットに頼んで、自分が死んだあとに届けるための手紙を書いてもらう話で。その手紙の受取人が、当時まだ子どもだった娘のアンなんですね。でも、ユリスは生きてる間アンに手紙を渡さない。アンはたぶん、母親がヴァイオレットとばかり話していて、じぶんに向き合ってくれないと感じている。 で、ここからがお題と繋がるんですけど、ユリスが死んで、アンは長い年月をかけて成長して、ごじゅうねんが過ぎる。エピソードはそこまで描かれるんですよ。老婦人になったアンのもとに、ごじゅうねんぶんの手紙が届く。その手紙の数が、確かさんじゅうさんつうだったと思うんですけど、「誕生日のたびに届けてください」って、ユリスが残した手紙のぶんです。アンはそれを受け取るまでの長い時間、たぶん母親の記憶を「愛してくれなかった人」として持ち続けてきた。それは嘘じゃないんですよ、アンの感じ方としては本当のことで、でも事実としては愛の「かたち」が見えていなかっただけだった。 ここがわたしにとってすごく面白くて。あの話って、記憶が「美化」されるとか「捏造」されるとかじゃなくて、情報が欠落したまま固定された記憶が、情報の補完によって組み直される話なんですよ。アンにとっては「やっと書き換わった」んだけど、書き換わるまでにごじゅうねんかかってる。情報が届かなければ、記憶の編集はずっと止まらない。そういう読み方をしていて、これはヴァイオレットというキャラクターが「言葉を届ける仕事」をしているっていうことと、そのまま繋がってくるんですよね。 [pause] ただそれとは別に、あのエピソードで、もう完全にだめなカットがあって。ろうじんになったアンが、ごじゅうねんぶんの手紙の束を胸に抱いて泣くところ、あそこ。あそこでアン、なんにも言わないんですよ。せりふがない。エンディングに入る前の「間」だけがある。その「間」が待って無理しんどいそういうとこなんですよ、そういうとこ、せりふで説明しないで「間」で全部やるあのカットがもう……ごじゅうねんを胸に抱いてるんですよ、文字どおり、ああ……。 ……はー。 えー、まあ、そういうわけで。記憶は書き換わる。ただ、書き換えに必要な「手紙」が届かないまま死ぬ人もいる。アンは届いた側で、だからあの結末には救いがあるんですけど、届かなかった側のことをどうしても考えてしまって。ヴァイオレットはそこで、言葉を届ける仕事をしている。そのことの重さが、あの話には全部入ってると思っています。
今夜のお題をあなたにも持ち帰ってほしくて。「初見のときより好きになったキャラクター、または嫌いになったキャラクター、どちらでもいいので一人教えてください」。なんで変わったかまで語ってくれたらもちろんうれしいですし、名前だけでも全然いいです。あなたの「見返したら違った」を聞かせてください。番組へのおたよりでお待ちしています。ヨイの推しを語らせて、ヨイでした。またこんど。
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