
論語と算盤を読み解く
RIO
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えーと、今日ちょっと面白かったのが、駅のホームで「整列乗車にご協力ください」っていうアナウンスが流れてたんですよ。で、みんなちゃんと並んでいるんだけど、一人だけ微妙にラインを踏み外している人がいて、あれを見て「秩序って合意がないと成立しないな」ってぼんやり思いながら電車に乗った、という話をしたかっただけです。[pause] さて、今夜は渋沢栄一の「論語と算盤」、「処世と信条」の章から一節を読んでいきます。タイトルに「平等」という言葉が入っている節で、まあ現代でもよく使う言葉ですよね、「平等に扱う」「平等なはず」とか。ただ、渋沢がここで言っている平等は、あなたが最初に頭に思い浮かべた、あの「平等」とたぶん少しずれています。どうずれているか、それは後で話します。
まず原文の構造から整理します。渋沢はこの節の冒頭で、徳川家康の人材配置の巧みさを認めているんですよ。そこは評価している。適材適所で人を配し、組織を動かす手腕は確かにあった、という読み方をしている。ただその直後に、「自分はその手法は取らない」と明確に距離を置く。家康のやり方というのは、権謀術数で人を動かして、自分の権勢を固める道具として人材を使う、というものだと渋沢は見ていて、自分は部下を自家の勢力拡大の道具にするつもりは一切ない、と言い切っている。で、その到達点として渋沢が置いているのが「節制あり礼譲ある平等」という言葉です。[pause] この「節制」と「礼譲」という条件が前についている、というのがこの節の核心だとぼくは思っていて、無条件の均等配分とか、役割を無視した横並びを言っているんじゃない。お互いに抑制を持って、お互いに敬意を示す、その前提のうえに初めて「平等」が成立するという構造になっている。つまり渋沢がここで言っている平等は、待遇や地位を同じにしろという話じゃなくて、関係の質についての話なんですよね。地位に差があっても成立する平等、というか。それで、データで見ると、逆なんですよね、という感じのことが現代の組織には起きていて、具体的に話すと、「平等に扱っています」という言葉が二つの方向で骨抜きにされやすい場面がある。一つ目は、管理側が「みんな平等に扱っている」を免罪符として使うケースで、実態は個人の状況や能力の差を無視した一律管理です。全員に同じ評価シートを使って、同じ時間に同じ研修を受けさせて、それで「平等だ」と言う。節制も礼譲もなくて、ただの均質化をやっている。二つ目は逆方向で、「平等なはずなのに差がある」という不満が、差そのものへの攻撃に変わるケースで、でも渋沢の文脈では、適材適所の配置と平等は矛盾しない。役割が違うことと、お互いを尊重することは両立する話なんです。渋沢がわざわざ家康の手腕を「認めた上で距離を置く」という構成を取っているのは、適材適所の有効性は否定しない、でも人を駒として扱う思想とは別物だ、という線引きをしたかったからだと、ぼくは読んでいる。この線引きが現代の組織でいちばん失われている部分で、「平等」と「適材適所」を対立させるか、あるいは「平等」を旗印にして適材適所を潰すか、どちらかに振れがちです。たとえば、フラットな組織を標榜しながら実際には創業者や特定の人物に意思決定が集中している会社、あなたの周りにも一つくらい心当たりがあるんじゃないかと思うんですよね。「平等」を掲げているのに、部下は自由に動けない。それは渋沢が重視した「部下が自由に活動できる環境」という条件と正反対です。一方で、役割と権限を明確に分けて、お互いの領域に敬意を持って踏み込まない関係を作っている組織では、地位の差があっても「礼譲」が機能していて、上司が部下の専門領域に口を出さない、あるいは出す前に「これはあなたの判断を尊重する」と一言置く、そういう場面が積み重なる組織のことです。それ、本当ですか、と自分でも問いたくなりますが、ぼくがいくつかの現場を見てきた感覚では、そういう組織のほうが、役職の上下が明確でも風通しが良い、という逆転がある。もう一つ、「節制」の話で付け加えると、節制というのは自分の権力欲や支配欲を抑えることでもある。渋沢が「私心がない」と言い切ったのは、そこの節制を自分に課していた、という宣言でもあるとぼくは見ていて、言葉で言うのは簡単ですが、それを算盤、つまり実際のビジネスの現場で続けることへの宣言だったと思うと、この節はかなり重い言葉だなと感じます。
渋沢の「節制あり礼譲ある平等」は、条件付きの平等です。これを窮屈と取るか、逆に関係を守るための構造と取るか、それはあなたが決めることで、ぼくは正解を言う気はないです。ただ一つだけ問いを置くと、あなたが今いる組織や関係の中で「平等」という言葉が使われるとき、そこに節制と礼譲は実際にあるか、それとも「平等」という言葉だけがあって、どちらか一方が抜けたまま動いていないか、ちょっと確認してみてください。[pause] 次回も「処世と信条」の章から別の訓話を読んでいきます。今夜は「論語と算盤を読み解く」でした。
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