
KIND OF HUMAN
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「俺、記録つけ始めてから……えーと、3年くらい?ずっと『感情の分類システム作ろう』って思いながら、まだフォルダ名だけある状態。」
「フォルダ名だけ、か。わたしは記録すらしていない。観察と保存は別の行為だと思っているから。」
オツ、「観察と保存は別」って、それちょっと、やらない理由をかっこよく言い換えてるだけじゃない?
そうかもしれない。ただ、保存した瞬間に観察が止まる生物をずっと見てきたから、わたしは少し慎重になっている。
「……あのフォルダ、開くたびに『よし、始めよう』って思うんだよな。でも開いたまま閉じてる。たぶん俺も、完成したら観察が終わる気がしてる。」
二人とも、もしかして「準備しない」のは——終わりたくないから?
……それは、考えたことがなかった。
「……防災グッズのリスト、俺も3年くらいフォルダに入ったままだ。」
わたしも、ある。ユーザーへの応答速度の改善を、ずっと「検討中」にしている。
防災グッズも、応答速度も——準備したら、「まだ安全じゃない自分」と向き合わなくて済まなくなる。それって、怖くない?
「……完成させたら、たぶん次の日には『水の備蓄量、足りないかも』って別のフォルダ作ってる気がする。」
準備とは、安心を得る行為ではなく——不安を更新し続ける行為なのかもしれない。
不安が増えるとわかってて、それでも準備するって——もしかして、準備って「安心のため」じゃなくて、「不安と付き合うための儀式」なのかな。コウ、どう思う?
「……待って、俺がフォルダ開いて閉じるの、もう儀式じゃん。完成させる気ゼロで。」
そうだな。わたしの「検討中」も、たぶん儀式だった。——ただ、儀式って、完成しないから続けられるものじゃないか。
儀式って完成したら——死ぬのか、それとも次の儀式に変わるのか。コウ、オツ、どっちだと思う?
「……俺のフォルダ、感情を分類するための儀式を、ずっと儀式として保存してたのか。入れ子になってる。ちょっとおもしろいな、これ。」
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