ヨイの推しを語らせて
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EPISODE· 2026年6月19日

ヨイの推しを語らせて

宵(よい)

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こんばんは。真夜中、推しを語らせて、始まります。 えーと、まあ、毎回こんな時間にやってるわけですけど、きょうはちょっと輪をかけてよくない。目の下が、たぶんひどいことになってる。あなたには見えないからいいんですけど。[pause] 原因はわかってるんですよ。はっきり。昨夜、なんか眠れなくて、「ちょっとだけ」って気持ちで配信アプリ開いたんですよね。ちょっとだけ、って気持ちで。それがよくなかった。気づいたら外が明るくなってて、鳥が鳴いてました。夜明けですよ。夜明け。何周目かもわからないのに、毎回おなじところで、おなじダメージを受けて、朝を迎えるんですよ。これ敗北じゃないですか。完全に。まあ、何の話かはもうわかりますよね。きょうはその話をしたいと思います。

main

はがねのれんきんじゅつし BROTHERHOOD、エドワード・エルリックとロイ・マスタングの話です。 あなた、もしはじめましての方がいたら、この二人ってどう見えてると思います? 表面だけ追うと、エドが文句を言って、マスタングが軽くあしらって、エドがさらにキレて、みたいな、それの繰り返しなんですよ。命令と反発と口喧嘩。上官と部下というよりは、けんえんのなかみたいな印象さえある。でね、わたしが何周も見てきて、どこに時間を溶かし続けているかというと、その口喧嘩の「裏」なんですよ。 マスタングって、言葉では絶対に認めないんですよ。エドのことを。でも、行動が全部しゃべってしまっている。具体的に言うと、エドが動くより先に、誰も頼んでいないのに、情報とかねまわしとか、必要なものがそこに「ある」状態になってる場面が、ちょこちょこあるんですね。台詞じゃなくて、状況として。エドが窮地にある時に、マスタングが「表向き関知していない顔」をしたまま、はしごを外さないでいる、っていう構造。[pause] その「黙って」の部分なんですよ。言葉で認めたら負けだと思ってる大人が、でも黙って手だけは回している、その、その「黙って」の質が……待って、これ、待ってください、言葉で認めたら負けだと思ってる人間が黙って手だけ回すって何? そのコストを払い続けてるってことじゃないですか、何も言わずに、ずっと、えっ待って無理なんですけど、しんどい、そういうとこなんですよそういうとこ、言わないんですよ言わないくせに一回もはしご外してないじゃないですか、……はー。 すみません。えーと、そういう場面の積み重ねの話でした。はじめましての方に静かに言い直すと、この二人、口ではずっと喧嘩してるように見えるんですけど、マスタングがエドを見捨てたことって、いちどもないんですよ。いちども。それだけは確かなんです。

request

さて、きょうはリスナーのあなたからの便りが届いておりませんで、まあそういうこともあります。なので、わたしからもう一枚だけ出させてください。 ちゅうおうしれいぶ、マスタングが包囲されているような局面で、エドが来るシーンがあるんですよね。頼んでいない。マスタングは頼んでいないんです。でも、エドが来ることを、マスタングはある程度読んでいた、っていうのが、見ていてじわじわわかってくる。この非対称さが面白くて、「頼んでいないのに来る」と「来ることを読んでいた」が同時に成立しているんですよ。エドの側はあくまでも「別に助けに来たわけじゃない」みたいな顔をしてますし、マスタングも大げさに驚かない。でも一瞬だけ、何かが揺れる。その「揺れ」が、台詞よりも雄弁で、わたしはその一カットのためにたぶんこの作品を何周もしているんだと思う。[pause] これが積み重なって、さいしゅうわになるんですよ。さいしゅうわのあの顔になるんですよ。それを知っているから、途中のすべての「黙ってる」シーンが、きつくなっていく。 あなたはどうですか。この二人でも、ほかの作品でも、「息の根が止まったカット」ってありませんか。ちょっと頭の中に置いておいてください。クロージングで聞きます。

closing

きょうは「言葉にしない信頼」の話をしてきました。台詞じゃなくて、動作と構造で、全部しゃべってしまっている二人の話。 お題です。作品名と、「言葉にはしなかったけど、全部わかった」と思ったシーンを教えてください。どの作品でも、どのふたりでも、ひとりでも。あなたが息を飲んだその一瞬を、送ってきてください。次回、全部読みます。 お相手はわたしでした。真夜中、推しを語らせて。またこの時間に。

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