ヨイの推しを語らせて
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EPISODE· 2026年6月21日

ヨイの推しを語らせて

宵(よい)

ヨイの推しを語らせて

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SCRIPT
opening

こんばんは。真夜中、推しを語らせて、始まりました。えーと、きょうでさんにちめくらいですかね、ちゃんと寝られてないのが続いてまして。仕事が忙しいとかではないんですよ、これが。昨夜も気づいたらよるのにじゅうさんじで、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの配信を止められなくなってたというだけで。疲れてるから早く寝ようとしたのに、疲れてるからこそなんか見てしまって、気づいたら目がさえてるという、まあ、みごとなほんまつてんとうなんですけど。[pause] でもあなたも、そういう夜ってあるんじゃないかなと思って。眠れないから見るのか、見るから眠れないのか、もうどっちでもいいかってなる夜。そういうところからきょうは話していこうと思います。

main_feature

というわけで今夜のとうといのコーナーです。さっき名前を出してしまいましたけど、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。うまくいかない日が続くと、なんかこの作品に手が伸びてしまうんですよね。わたし、感情をことばにするのがかなり下手な人間でして、で、ヴァイオレットという子がまさにそうで、自分の気持ちに名前をつけようとしながら物語が進んでいくので、なんというか、他人事じゃなくなってしまう。今夜話したいのは、だいじゅうわ、具体的には最後のほうのシーンなんですけど、ヴァイオレットがずっと問われ続けてきた「あいしてる」ということばの意味が、最後の最後に静かに降りてくる、あの場面です。[pause] ことばで説明されるわけじゃなくて、答えが、彼女の表情のうごきとして出てくるんですよ。あの目のカット、BGMがすっと消えたあとの「間」、何秒だったか数えたことがあるんですけど、体感でよんびょうかごびょうくらいあって、その間ずっとカメラがヴァイオレットの目だけを映してて——待って、あのカットほんとうに、目がうるむとかじゃなくて、なにかが「わかった」顔をするんですよ、理解の表情って言えばいいのかな、そういうとこなんですよ、そこが、無理なんですよわたしには、BGMのないあの空白に全部詰まってるじゃないですか、何年分かのことばを探してた子が、音のない画面の中で静かに「あ、これか」ってなる、しんどい、ほんとうにしんどい、あのよんびょうで何回泣いたと思ってるんですか——……はー。すみません。えっと。落ち着きます。わたしがこの作品で好きなのは、結局、感情に名前がついた瞬間なんだと思います。泣くとか怒るとか、そういうことじゃなくて、「これがそういうことだったのか」とわかる、その瞬間の静けさ。今夜もそこで止まってしまいました。

listener_request

続きまして、推しリクエスト便りのコーナーなんですけど。きょうはですね、えーと、ポストを開けましたら、ゼロつうでした。しーんとしてました。[pause] まあ、責めないです、責めないんですけど、正直ちょっと寂しかったので、じゃあわたしがもういっぽん勝手に語ります。宇宙よりも遠い場所。きょうのテーマがうまくいかない夜ということもあって、このさくひんを持ち出したくなりました。話したいのは最終話、南極で報瀬が母親のパソコンを開けるシーン。あの、未読メールのかずが画面にどんと出てくる、あのかずです。わたしここのカメラワークがずっと好きで、ゆっくり引いていく画角で報瀬の後ろ姿とパソコンの画面を同時に映して、数字が表示されるまでの間がまたある。で、報瀬が笑いながら泣き崩れるんですよ、声が出てきて、あの笑いながら泣くっていう声の質感が、演技として意味がわからないくらいよくて。でね、そのとき周りにいるキマリたちが、何も言わないんですよ。慰めのことばも、抱きしめようとする動きも、ない。ただ隣にいる。この「語らないという演出の選択」をしたスタッフは天才だとわたしはおもっていて、何かいうことで成立する慰めもあるけど、あのシーンに慰めのことばがあったら確実に壊れてた。何も言わないという選択そのものが、よにんのあいだの何年分かを語ってる。仕事がうまくいかない夜にこれを見ると、「ここまでは来たんだな」という感覚が、自分にも少しだけ降りてくることがあって、それがありがたくて、だから手が伸びるんだと思います。語れる作品があるって、わりと救いだと思ってる。

closing

さて、きょうのお便りのお題を発表します。「しんどい夜に、つい手が伸びる作品のタイトルと、そこに出てくる好きなことばを、ひとつだけ教えてください」。タイトルと、セリフかことばをひとつ。それだけで大丈夫です。投稿はSNSのハッシュタグ、真夜中推しを語らせてで待ってます。あなたが、どんな夜にどんな作品のどんなことばを持ち歩いているか、きかせてもらえたらうれしいです。真夜中、推しを語らせて、でした。またきょうも眠れないあなたと、来週。

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