
ヨイの推しを語らせて
宵(よい)
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こんばんは。真夜中、推しを語らせて、始まりました。えーと、今週ね、ちょっとしんどかったんですよ、わたし。なんか仕事がうまく回らなくて、帰ってきてソファに座ったら、そのまま気絶するみたいに寝落ちしてて。で、目が覚めたら深夜のにじ時で、部屋の電気もテレビもつけっぱなしで、なんか、あ、またやったな、みたいな。[pause] そのまま二度寝すればよかったんですけど、なぜか目が覚めてしまってて、でそこから何をしたかというと、ずっと積んでたアニメの円盤を取り出したんですよね。もったいなくて開けられなかったやつ。ちゃんとした気持ちで見たいから、とっておいてたやつ。でも深夜のにじ時に、半分寝ぼけた状態でセロファンを剥がしながら、まあいいか、って思って。眠れない夜ってなんか、アニメが異様に染みるじゃないですか。普段より全部が刺さってくる感じ。そういう夜の話を、きょうはしようと思います。
えーと、今夜の尊い。選んだのは『さんがつのライオン』です。まあ、知ってる方も多いと思うんですけど、中学生の将棋棋士、桐山零が主人公の話で。零ってほんとに孤独な子で、強いけど、強いがゆえに周りから切り離されていくような、そういう重さがずっとある作品で。わたし、しんどいときに見返す作品のひとつなんですよ、これが。[pause] 一期に、零が大事な対局を落として、夜、橋の上でひとりでいるシーンがあるんですよね。説明とかモノローグとかじゃなくて、ただ橋の欄干に寄りかかって、川を見てる、それだけのカットで。で、そこにかわもとあかりさんが来て。あかりさんって零のことをずっと気にかけていて、でもあかりさんがそのとき言ったのが、「ごはん、食べてく?」、それだけなんですよ。励ましもしない、頑張れとも言わない、何があったかも聞かない、ただそれだけ。なんか、何もかいけつしてないのに、その一言で零が少し息ができるような空気になるんですよね、あのカットが。で、まあ、関係性がいいなあって思ってたんですけど、でもわたしが本当にしんどいのって、「食べてく?」の前のまほんのすこしの間で。あかりさんが零の顔をいちかい見て、それだけで全部わかって、でも何も言わないで、待って、あの間が、「食べてく?」って言うまでの零.なんびょうかの間が、しんどい、無理、あかりさんがぜんぶ察してて、でも説明させないで、ただ「ごはん」って言えるの、そういうとこ、そこなんですよ、そこ、そういうとこが、待って、ほんとに、無理、……はー。すみません。まあ、えーと。仕事がうまくいかないとき、何度かこのシーンを思い出したんですよね、今週。正しい言葉をかけてもらうより、ただ「食べてく?」って言ってもらえたほうがたぶん楽になれる、みたいな。つらいとき、アニメが教えてくれるのって正解の言葉じゃなくて、正解の間だったりするんですよね。…尊い。
えーと、リスナー便りのコーナーなんですが、きょうはおだやかな夜で、投稿がなくて。まあ、それはそれで、こういう夜もありますよね、ゆっくり聞いてくれてればうれしいです。で、そのかわりに、わたしが最近もういちど見返してきづかされた場面を話させてもらおうと思って。選んだのは『ピンポン ザ アニメーション』です。松本大洋原作の、卓球の話なんですけど、アニメーション演出がとにかく独特で、絵が崩れて変形して、それが却ってキャラクターの内面を映してる感じがして、わたしずっと好きな作品なんですよ。で、ペコとスマイル、ふたりの幼なじみがいて。スマイルって本来ものすごく才能があるんだけど、卓球に本気になれないで、ずっと抑えてる子で、でもある場面でペコが、「ヒーローはこないの?」って聞くんですよね。それにスマイルが、「くるよ」って答えるんですよ。みじかい。ほんとにその一言だけで、でそのあとスマイルの表情がしずかに変わるカットがあって。セリフも少ないし、動きも少ないのに、なんかそのしずかさが、逆にすごく重くて。なんか仕事がうまくいかないとき、「ヒーローはこない」って思ってしまうじゃないですか、なんか誰かが助けてくれるわけじゃないし、状況が急に変わるわけじゃない、みたいな。でもこの作品って、ペコにとってのヒーローはそとからやってくるものじゃなくて、もうそこにいるものとして描いてるんですよね。スマイルの中にあるものを、ペコはただ呼んでるだけで。うまくいかない夜に、自分のなかにあるものをもういちど見てほしい、みたいな、そういうまなざしがある作品で、それがわたしはすごく好きで。よかったら、あなたもつらいときに思い出すシーン、教えてほしいなあと思います。
きょうはしんどい夜とアニメの話をしました。眠れないとき、うまくいかないとき、なぜか見返してしまう作品って、たぶんあなたにもあると思うんですよね。そこで、お題です。「しんどいとき、なんどでも見返してしまうアニメと、そのときいつも止めてしまうシーンを教えてください」。止めてしまう、っていうのは、思わず一時停止したり、巻き戻してもういちど見てしまう場面のことです。番組のSNSか投稿フォームから、お待ちしてます。真夜中、推しを語らせて、でした。おやすみなさい。
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