深夜のひとりごと、聞いてもらえますか
深夜のひとりごと、聞いてもらえますか
EPISODE· 2026年6月22日

深夜のひとりごと、聞いてもらえますか

灯(あかり)

深夜のひとりごと、聞いてもらえますか

TAP TO PLAY

このエピソードをシェア

SHARE
SCRIPT
opening

…こんばんは。今夜もここにいます。えーと、きょうの東京、なんか蒸し暑いというか、じめっとした空気がずっと首のあたりにまとわりついてくる感じで、外に出るたびに少し、気持ちが重くなるような夜でしたね。で、帰りにコンビニに寄ったんですよ。べつに何が食べたいとか決めてなくて、なんとなく入って、なんとなく歩いて、で、気づいたら手にプリンを持ってたんですよね。プリンを買おうと思って行ったわけじゃないのに。コンビニって、あんなにいろんなものが並んでるのに、なぜかいつも同じような棚で同じようなものを手に取ってる気がして、選択肢の多さと、わたしの選んでいなさが、なんか比例してるというか。[pause] まあ、どうでもいい話なんですけど。今夜もこのくらいの温度で、やっていこうと思います。

news

えーと、今夜ひとつだけ、小さなニュースの話をさせてください。東京の北区にある小学校で、きのう火災がありました。建物には救助袋が設置されていたんですけど、実際の避難の中では、その救助袋が使われなかった可能性があるという話で、構造上の問題なのか、手順の問題なのか、まだ詳細はわかっていない、という状況です。で、わたしがこれを読んだときに最初に思ったのは、「備えてある」と「使える」って、全然ちがう話だったんだな、ということで。救助袋って、設置されてれば安心じゃないですか。あるって知ってれば、なんとなく守られてる気がする。でも、実際にその場に立ったとき、煙が充満してて、子どもたちが怖がってて、先生たちも冷静でいようとしていて、そのなかで「救助袋の手順」を正確に踏めるかって言われたら、それはもう、訓練した回数と、そのときの状況と、たぶん運も混ざってくる話で。誰かが悪いとか、準備が足りなかったとか、そういう方向にはわたしはいきたくなくて、ただ、「いざというとき」って、いざになってはじめて「あ、いまがいざだ」ってわかるから、そのいざに備えるのって、ほんとうに難しいな、という静かな怖さだけが残っていて。[pause] …まあ、そういう日もありますよね。うまく言えないんですけど、なんかこわいな、静かに、って、それだけです。

letter

えーと、今夜はお便りが届いていません。うん、そうですね、届いていないです。これをどう言えばいいのか、寂しいとも、まあそういうこともあるとも、どっちにも振り切れなくて、ただ「届いていない」という事実が、ここにあります。でもね、書こうとして、やめた夜って、あると思うんですよ。文章を途中まで打って、消して、スマホを置いて、そのまま天井を見てる、みたいな夜。言葉にしようとすると、なんか嘘になる気がして、送れなくなる夜。それって、気持ちがないんじゃなくて、むしろ気持ちが多すぎて言葉に収まらない夜だったりするじゃないですか。きょうのニュースの話もそうで、「こわい」とか「なんか変だな」とか、そういう感覚って、文字にすると急にちっちゃくなる気がして、送れなくなる、っていうのも、なんかわかるような気がするんですよね。だから、書けなかったあなたのこと、ちゃんと想像してここにいます。無理しなくていいですよ、ほんとに。[pause] 来週も、来なくていいです。でも、来てもいいです。何も解決しないけど、わたしはここにいるので。

closing

えーと、じゃあ今夜はこのへんにします。備えって、できてるかどうか、たぶん自分ではわからないまま終わるんですよね。ぜんぶ確かめることはできないし、いざになってみないとわからないことが、生活の中にはたくさんあって、でも、それを今夜全部解決しなくていいと思っていて。今夜ここにいた、それだけでいいです。ゆっくり寝てください。次回のことを少しだけ、ひとりごとみたいに言わせてもらうと…あなたが「いざというとき」って頭に浮かべるの、どんな場面ですか。火事とか地震とか、そういう大きな話じゃなくてもいいです。なんか守ってるつもりで、守れてないかもって、うっすら思ってるもの、ありますか。答えなくていいです。ただ、どこかで思い浮かべてもらえたら、それだけで。おやすみなさい。

← PREV

エピソード

NEXT →

エピソード

ARCHIVE

深夜のひとりごと、聞いてもらえますか の他のエピソード