深夜の、それでいいんじゃないか
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EPISODE· 2026年6月19日

深夜の、それでいいんじゃないか

RIO

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SCRIPT
opening

えーと、きょうね、ひさしぶりに昔みてたアニメをもういちど流してたんですよ。なんとなく、眠れなくて。べつに見直すつもりじゃなかったんだけど、一話から自動再生になってて、まあいいかって。で、ずっと「つよくなる話」として記憶してたんですよね、その作品。主人公がなんか強敵に勝つたびにおれも少しすっきりするやつ。そういう見方をしてたはずなんだけど。[pause] 転移のシーン、あの一瞬の顔が、なんか、残ったんですよ。説明しにくいんだけど。あの顔。きょうはそのことを、ずっと考えてました。

main_question

ちょっと待って、整理すると、転移ものの主人公って「呼ばれる」じゃないですか。神様に、とか、光に引っ張られて、とか。でも、「引っこ抜かれた」に近い描き方のほうが多くて。それなのに、抵抗してる顔をしてないことが多い。あれ、おれずっと気にしてたんですよね。 で、最初は「強くなりたかったから転移した」って読んでたわけです。現実がいやで、力がほしくて、だから穴に落ちた、みたいな。でも、それだと「なんであんな静かな顔なんだろう」が説明できなくて。叫ぶとか、怖がるとか、もっとドラマチックになりそうなのに、ならない。 で、転移前の描写を思い返すと、友達と話してる場面がほぼない、とか、進路の書類が白紙のまま机にある、とか、ちょうど帰り道に一人でいる、とか。「何もなかった」じゃないんですよね。「何かを諦めかけていた」の、その途中にいる感じで。[pause] そこで、あれ、そういうことかって思ったんですよ。異世界転移って「逃げ」として語られることが多いけど、もしかしたら、すでに何かを手放しかけていた人間に、「タイミングよく落ちてきた穴」だったのかもしれない。呼ばれたんじゃなくて、ちょうど手が離れかけていた、だから落ちた。 で、その「諦め」が何だったのかを、作品はほぼ明示しないんですよ。名前をつけないまま転移させる。だから見てるあなたが、勝手に自分の文脈を当てはめてしまう。おれがそれに気づいたのが、きょうで。……まあ、そういうことなんですよね。

letter

えーと、きょうはお便りが届いていないので、そのまま話します。 こういう夜に限って、「あ、これ自分も誰かに聞きたかったやつだ」って問いが浮かんでくるんですよ。で、今夜の問いはこれで。転移前の主人公の諦め、あれって何だったと思います? 夢? 人間関係? それとも、「自分が普通じゃない」っていう感覚、そのこと自体を諦めようとしてた、とか。 おれの仮説はひとつあって、たぶん、「自分がここにいていい理由」をなくしかけていたんじゃないかと思う。友達がいないとか、将来がないとか、そういう話じゃなくて、もっと手前の、「おれここにいていいんだっけ」って、その問いに答えられなくなってきてた、みたいな状態。だから穴に落ちるとき、抵抗しない。[pause] ただ、そう読むと少し重くなりすぎるので、そうじゃないかもしれない。もっと軽くて、ただ「あすやることがなかった」だけかもしれない。そっちのほうが正直しっくりくる場合もある。 あなたが転移ものの主人公に感情移入するとしたら、「強さ」に乗っかってる? それとも、転移前の、あの静かな顔のほうに乗っかってる?

closing

異世界転移って「始まり」の話として読まれるけど、もしかしたら、「何かが終わった直後」の話なのかもしれない。きょうはそこまで。 今夜のお題です。あなたが一番感情移入した、転移前の主人公の顔。それはどんな顔でしたか。 「深夜の、それでいいんじゃないか」でした。

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