
#69 ストラディバリウスが行田に来る
AIRWAVE GYODA
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うーん、生は……たぶん中学の音楽の授業が最後で、アニメの中のピアノの方がよっぽど泣かされてるんだよな。
アニメで泣けるなら、本物の音はもっと直接刺さるとぼくは思ってて——九月二十七日にベル・プラスで三千五百円でストラディバリウスが聴けるらしいよ。
ストラディバリウスが行田で三千五百円って、それ本当に大丈夫なの?って思いながら、でも絶対行く。
「絶対行く」が出るまで三秒もかからなかったけど、普通ストラディバリウスの演奏会って一万円超えが当たり前だから、三千五百円は相当安いとぼくは見てる。
一万円超えが基準ってことは知らなかったけど、言われてみるとアニメのイベントで払う金額とそんなに変わらない気がしてきた。
「値段が同じ」って気づいた瞬間に、遠い世界だと思ってたのが急にほどけてくる感じ、ぼくにもあって——敷居って実はコストじゃなくてイメージだったのかもしれない。
たぶんドレスコードのイメージで、でも行田のベル・プラスに「ジャケット着てこい」って書いてあるわけないよな、って考えたら一人でちょっと笑えてきた。
笑えてくるのわかるんだけど、今回そのジャケット不要な場所にストラディバリウスが来てるの、熊谷出身のピアニスト・森田義史さんの後援会が主催してるから——地元の人のつながりが本物の楽器を引き寄せてる、ってぼくは面白いと思ってる。
後援会って、要は「応援するために集まった人たち」が動かしてるんだよね——なんかすごく人間くさくて、それが本物の楽器を呼んでくるっていうのが面白い。
民間の後援会の熱量だけじゃ会場も予算も動かしにくくて、いきいき財団が入ることで初めて形になった、っていう組み合わせがこの三千五百円を可能にしてるとぼくは見てる。
仕組みより先に、「熊谷出身の人が地元に帰ってくる」っていう引力みたいなものがあって、財団も後援会もそれに乗っかった形なんじゃないかな。
その引力、森田さんだけじゃなくてバイオリニストの大谷康子さん——『おんがく交差点』の人が一緒に来てることを考えると、全国区の人まで引き寄せてるのがすごいとぼくは思う。
『おんがく交差点』、名前は聞いたことあるかもしれないくらいで正直自信ないんだけど、その人が行田に来るのは森田さんのつながりがなかったら絶対なかった話だよな。
大谷さんって毎週全国に顔が出てる人なのに、その人を行田に向かわせたのが熊谷出身の森田さんの縁だとすると——地元って、遠くまで行った人が帰ってくるときに一番でかくなるとぼくは思う。
それ、なんかわかる気がして——戻ってきたとき、出ていく前より行田がずっと広く見えたから、二十七日の客席もたぶんそういう人で埋まる気がする。
全席自由で三千五百円って、「難しく考えずに来て」ってメッセージをそのまま値段と席に込めてる気がして——この来やすさはたぶん偶然じゃないとぼくは見てる。
正直、一人で行くかな——行田で本物のストラディバリウスの音を聴く、っていうのを、まず自分だけで受け取りたい。
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